大阪市城東区でフレキシブルチューブとベローズの設計・製造を手がけてられる三元ラセン管工業さん。 95年の社長就任以降、様々な社内改革をし、自社のみならず、関西の中小ものづくり界を先導してこられた高嶋社長。 ITと展示会を併用することで卸売から直販へのシフトを成し遂げ、取引先を4倍に増やされたご経験をお聞きかせいただきました。 |
最初に展示会に出展したのは2002年。製造卸から直販へシフトしていこうとする過程で、
会社と製品を広く知ってもらうには展示会だ、ということで出展をはじめました。
展示会に来てもらい、製品を見てもらい、触ってもらうとよそとの違いをわかってもらえます。
この10年間、いろいろな展示会に出展してきましたが、
一番、力を入れている展示会は機械要素技術展です。
展示会は
1)経営戦略 2)マーケティング戦略 3)情報発信 4)展示・装飾 5)展示会当日 6)出展後の対応
これら全てができていないと成功しません。
1)経営戦略
“自社の強み”。これをきちんと出展戦略に入れ込んでいくこと。
強みというと「うちにはない」という人もいますが、
お客さんがどうして自分のところに注文してくれるか、という理由です。
何十年も商売をしてきた中で、お客さんがずっと注文してくれるなら
その人たちがなぜ注文してくれるのか理由があるはず。
強みがないと言っている人はその理由を知らないだけです。
次に“ターゲットの絞り込み”。
うちの場合は“1個2個必要な人”
普通、マーケティングというのは2割しか売れ筋の商品というものはなくて、
この2割の製品が売上の全体の8割を占めるといわれています。
皆、この2割を売ろうとする。しかし残りの死に筋が8割ある。
8割あっても売上は全体の2割しかない。
アマゾンはこの8割を強化して世界一の本屋になりました。
町の本屋は売れ筋の2割しか在庫を置いていない。
自分のところはこっちの2割で行くか、逆の8割で行くか、
しっかり絞り込まなければいけない。
うちの場合は8割のほうに絞り込んでいます。
つまり事業の位置づけ、ポジショニング。
製品は高価格なのか低価格なのか。高機能なのか低機能なのか。
技術・市場は新規なのか既存なのかハッキリ位置づけないといけません。
2)マーケティング
展示会は1回出してみて効果がなかったからといって
やめてしまってはいけません。
繰り返し繰り返し出すことによって、企業のブランドイメージは向上し、
マーケットによるポジションも確立されてきます。
うちは設計の方をターゲットにしているので
展示会やって1年後2年後でないと注文は来ないです。
すぐに注文がないからといってあきらめてはだめ。
ずっと出展を繰り返しているから2年後3年後に注文が来るようになります。
新製品や新技術、という目玉商品を用意すること。
ずっと出していると毎回新しいものを用意するのは難しいですが、
同じ製品をちょっと変えたりして出すことにしています。
トップがブランディングを継続してやること。
新製品を出せば新聞社が記事を書いてくれる。
展示会前にこういうものを出せば、記事を見て展示会を見に来てくれる人がいる。
新製品を作って新聞社などにPRしておきます。
3)情報発信
展示会がはじまってしまったら、
その展示会が成功するかどうかはもうそこで決まっています。
大事なのは開催前に情報発信をきちんとやっておくこと。
ホームページ、ブログ、動画、Twitter、Facebook、新聞等に情報を出します。
更に展示会のロゴを活用して封筒や荷物に貼って出しています。
「また出すんかい」っていうくらい繰り返し出します。
招待券は必ず送ること。
招待券を送ったお客さんはだいたい優先的にそのブースに来てくれます。
90%以上の人が招待券を送ってくれた出展社のブースを訪問するらしいです。
ちなみに機械要素技術展では招待券は無制限にもらえます。
事前にアポを取っておくことも大事です。
「何日の何時に待っています。
その日なら上司や技術者を同席させることが出来ます。」といって
あらかじめ電話でアポをとっておきます。
まったく関係ないところといきなりアポをとるのではなく、
今まで取引があった会社、以前からアプローチをしていた会社、
まだ具体的な提案ができていない会社、
名刺交換をしただけの会社、資料請求があった会社など、
そういうところにアポを取って当日来てもらう、というやり方です。
むずかしいところもあるが、これをやっておくことが大事。
機械要素展などはあれだけの大きな会場で、
たまたま偶然歩いていて見つけてくれるお客さんなどごく稀。
自分のブースめがけて来てくれるお客さんを先に作っておく必要があります。
3)-1 ホームページ・ブログ・動画を用いた情報発信
2001年にホームページを開設して以降、
2005年からはブログをはじめ、現在3つ書いています。
ベローズ案内人、社長の日記、BMB(ビジネスマッチングブログ)
2009年からはTwitter、2010年からはFacebookでも情報発信をしています。
--数ヶ月前からブログのフッターに展示会のバナーを貼り、ブログ訪問者に繰り返しPRする。
3)-2 ブログからのブランディング
現在、グーグル検索で
「案内人」で検索すると74,300,000件中1位、
「社長の日記」で検索すると43,800,000件中1位にいます。
2つのブログはこのキーワードでずっと1番にいます。
ブログをずっと書いていたおかげで、
テレビやラジオの出演のきっかけになりました。
アクセス数は通常1日200人前後。
日によっては4000人くらいの訪問者数になります。
4)展示・装飾
ブースは明るくしておかないと入りにくい印象を持たれます。
もともと付属しているライトに自社で増設しています。
1日中いると余計暑いですが、明るくしておくと人が出入りしやすくなります。
自社の強みは通路からでもわかるようにしておきます。
強みは大きく書いて通路から良く見えるように。
動画・試験装置等動きがあるものは通路側に配置します。
商談席も必要です。
中には見積書を持ってみえる方もあるので、商談する場を用意しておきます。
説明パネルは読みやすく、情報を多くします。
機能説明より効果を伝えることが大事。
「これをやったから、こんなふうに変わりました」という書き方をします。
5)展示会当日
経営者自らブースに立ち、熱意をもってお迎えしていることを伝えます。
営業社員にまかせっきりにはしません。
座っているとお客さんは入りづらくなります。
人がいなくても必ず立っていること。
技術的な質問に対応できる人が常にいることも大事です。
後日連絡します、ではなくその場で答えられると、
お客さんも、もっと長くいろいろ聞いてくれます。
私はいつも通路に立って名札を見ています。
自分のところに関係ありそうな会社であれば、
すぐに会社の名前で「○○会社さんどうぞ」と言うと、
やはり自分の会社を呼ばれると気持ちが違う。そういう誘い方も有効です。
製品に触ってもらい、他社との違いを見てもらいます。
機械要素技術展は6月なので新人研修等の団体がよく来てています。
自分のところに全然関係がなくても丁寧に説明します。
そうするとサクラのような効果があり、ブースににぎわいが出て、
つられて入ってくる人が出てきます。
こういう人たちを大事にしています。
新人研修の人たちは帰って報告書を書かなければいけないので、
結構、真剣に聞いてくれます。
あと、ブースを留守にしないこと。
食事に全員で行ってしまうと、その展示会でたった1回のお客さんとの
出会いをムダにしてしまうかもしれません。
食事は必ず交代でいくこと。
TwitterやFacebookでブース番号がわかるように写真を撮って、
「今からはじまります」というような速報を流します。
カタログに関してうちは絶対むやみにばらまきません。
名刺交換しないとカタログは渡してはいけない、と言っています。
名刺をくれないような人は注文しません。
6)出展後の対応
出展後はお礼状を送付します。
出展中にアンケートをとる会社は多いが、
粗品目当てであったり、実際にためになるアンケートがとれるとは思わない。
出展中のアンケートはやるべきでないという考えです。
その代わり展示会が終わってから出展中に話をした人の中で、
今後関係がある、と思われる方にだけアンケートを取ります。
次の展示会の参考にするためにね。
可能性のある企業には展示会のあとアポを取って、企業訪問をします。
これをしておくことで1年後2年後の注文につながります。
通常は「行かない営業」を目指していますが、展示会の後だけは必ず訪問します。
実際に会社に行くと将来案件が出てきそうかどうか、というのも
もっと詳しくわかるようになります。
機械要素技術展では3日間で300枚くらいの名刺が集まります。
その中から可能性があるのは1割。30社くらい。
展示会後から1ヶ月くらいかけて企業訪問をします。
展示会からの受注事例
大手飲料メーカー、大手製鉄メーカー、防衛庁向け、等々。
すべて展示会出展後1年、2年後に受注です。
うちの製品は使われ方が90%わかりません。
設計を担当されてるお客さんが来てくれないと、
売り込みに行けないんです。
それにはやはり展示会が一番いいと思います。
展示会出展の効用
既存客がこういうのもあるのか、と追加購入をしてくれ、
今まで自分の注文していたもの以外にも感心を持ってくれます。
製品の理解を深めてもらえるし、
企業の姿勢や技術力、機密情報なども直接アピールできます。
顧客のナマの声を聞くことが出来る、というような効用があると思います。
展示会出展のメリット
潜在顧客を呼び寄せる事が出来るし、
販路開拓だけではなく協力会社との出会い、
逆に売り込みなどから新しいものを取り扱っていくきっかけになります。
展示会はそういう場でもあります。
ブースの様子やナマの反応などをHPに書き込んだり、
営業資料として使うことができる。
出し続けることによって企業のイメージが向上していく、
展示会には新規顧客獲得だけではなく、
そういうメリットもあるのではないかと思います。
展示会の成功は開催前で決まります。
トップが先頭に立つことが大事。
継続することによって成功に結びつきます。
大阪府の制度を利用すると30万円を上限に支援を受けることができます。
どうしても役所から補助金をもらっての出展となると、
すぐに結果報告を求められるので、そこが難しいところです。
制度についてはこちら>>
機械要素技術展でいうと出展料が3日間で60万円。
ブース装飾を入れると100万円はかかります。
だから最初は中小企業展など出展料が安い展示会で練習して、
自分のところのやり方を考えていく。
それから大きな展示会に出す、というやり方がいいと思います。
今回、高嶋社長にインタビューさせていただき、何よりも響いた言葉は「継続」です。
継続してブログとホームページで情報を発信しつづけることで、
見事にご自身をブランディングされ、多くのメディア出演や具体的なお仕事につなげてこられました。
ITによる情報発信も展示会に出展しつづけることも、全て継続することで好循環が起こるのですね。
高嶋社長、お忙しい中、インタビューにご協力いただきありがとうございました!
【三元ラセン管工業 会社情報】
会社名 | 三元ラセン管工業株式会社 |
お問い合わせ | TEL:06-6968-2037 |
ホームページ | http://www.mitsumoto-bellows.co.jp/ | ブログ | ベローズ案内人 http://blog.zaq.ne.jp/bellowsrabo/ 社長の日記(経営者会報ブログ) http://mitsumoto-bellows.keikai.topblog.jp/ |
所在地 | 大阪市城東区永田1丁目2番37号 |
【これまでに出展した主な展示会】
・機械要素技術展
・関西機械要素技術展・・・ほか